構造的心疾患(SHD)カテーテル治療の多施設レジストリーグループ『OCEAN-SHD研究会』
Optimized CathEter vAlvular iNtervention Structual Heart Disease

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コラム

その1
なぜ論文なのか
その2
論文を書く意味とは…
その3
随時更新予定!

なぜ論文なのか

みなさんは医師を志したときに、どのような医師になろうと思ったでしょうか?

自分は「いい臨床医」になりたいと漠然と思っておりました。目の前の患者さんに最善の治療が提供できること、また自分の大切な人や家族が困ったときに頼りになる医師でありたいと思っていました。それは大学病院やアカデミアという研究組織とは違う世界なのではないかと思い、大学卒業と同時に医局には属さない、一臨床医として生きていくことを決断しました。

しかし、臨床医として突き進んでいくうちに限界が見えてきました。医師となった以上、たくさんの患者さんをよくしたいという気持ちは持っていたのですが、目の前の患者さんだけをよくしているだけでは限界があります。例えば自分がTAVIをこれから年間100例自分の手でやりつづけたとして、現役にうちに何例治療できるでしょうか。せいぜい2000から3000例なのではないでしょうか。そう考えていると臨床医として手術数など患者さんの数をこなすことは重要ですが、数だけではなくて、そこから得られる何かをアウトプットすることの意義を意識するようになりました。アウトプットも学会発表ではその場で聴いてくれた方の記憶に残るかもしれませんが、記録に残りません。論文を書かなくてはいけない。論文を書いて自分が直接、診察や治療に関わっていない人の健康に貢献する。そのような世界へと興味がわくようになりました。例えば、インスリンを発見した基礎医学の先生は、これから何億万人の命を救い続けるんだと、基礎研究って素晴らしいと思います。では臨床医である自分はどうするか?患者さんを診て、実際に手を動かして治療して、そこで出てきた臨床上の疑問を解決すべく臨床研究を行って、論文化して世界に発表する。きっとその論文を世界の裏側のブラジル人の先生が読んでくれて、ブラジルの患者さんに役立ててくれるかもしれません。それってとても素晴らしいことではないでしょうか。自分が論文を書く理由は自分が直接診ていない患者さんのために貢献する。これに尽きると思います。論文を書くことは医師としての喜びなんです。業績とか名誉とか目立ちたいとか関係ないんです。

そう思っていると、後輩の指導や医学教育についても同じようなことが言えるなと思います。最近は後輩に書いてもらって自分は指導する立場になっていますが、論文を書く喜びをぜひ感じてほしいと思いますし、自分も間接的に手助けすることに喜びを感じています。教育も同じです。今、自分は当初の意向とはちがってなぜか大学病院に在籍してますが、そのような視点で教育も行っています。自分が指導させてもらった先生方がたくさんの患者さんを助けていく。それって素晴らしいことですよね。

最後に、OCEANは論文を書くことに特化した組織です。論文を書かなければならない使命感に燃えている!ということではなくて、論文を書くことに喜びを感じて共有する楽しいクラブ活動のようにありたいと思います。ぜひ大切にしてよりOCEANが発展していけるように貢献していきたいと思います!

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渡邊 雄介Yusuke WATANABE

OCEAN-SHD 研究会 / 理事 / PI (TAVI , Mitral , LAAC)
帝京大学 循環器内科

2003年
筑波大学卒業
2003年
災害医療センター臨床研修医
2005年
榊原記念病院循環器内科レジデント
2009年
榊原記念病院循環器内科医員
2011年
Institut Cardiovasculaire Paris Sud, Clinical Fellow
2013年
帝京大学医学部循環器内科 助教
2017年
帝京大学循環器内科 講師

人を相手にせず、天を相手にせよ。
天を相手にして己を尽くし、
人を咎めず、
我が誠の足らざるを尋ぬべし。
(西郷隆盛『南洲翁遺訓』 )