構造的心疾患(SHD)カテーテル治療の多施設レジストリーグループ『OCEAN-SHD研究会』
Optimized CathEter vAlvular iNtervention Structual Heart Disease

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北欧の地デンマークから 臨床留学体験記

2024年1月19日  著者:小張 祐介(慶應義塾大学)  若手Dr.より会員のつぶやき


今回スイス・ベルン大学留学中の中瀬先生より若手ブログのバトンをいただきました小張祐介と申します。

2013年に東北大学を卒業し、救命救急センターを経て医師4年目より循環器診療に従事しております。その期間に初めてTAVIを見学して以来、その洗練された技術に魅了され、SHD interventionを学ぶべく医師6年目に慶應義塾大学病院の門を叩き、林田先生の下で研鑽を積んで参りました。そして、2023年10月よりデンマークの首都コペンハーゲンにありますデンマーク王立大学病院のClinical fellowとして留学を開始しております。

デンマークに留学?とほとんどの方は思うかもしれません。デンマークは北欧4国の一つで、ドイツ・スウェーデンの間に位置し人口約600万人と比較的小さな国です。しかし、世界幸福度ランキングでは必ず上位に入るほどで、我々留学者も含め医療費は無料、治安も極めてよく子供も安心して遊ぶことができます。また電車・バスなどの交通網も安定しておりかつ時間も極めて正確で、アプリで位置情報を確認することもできます。留学3か月が経過して感じるのは、「東京に住んでいるのと似た感覚で、あまり新生活にストレスを感じないな」ということです。

唯一困ったことは、デンマークの気候です。風が非常に強く、また10-11月はほぼ毎日といっていいほど雨が降りました。風が強すぎて傘が意味をなさないことを知っているためデンマーク人は傘を差さないようです。ただ乾燥しているためすぐに服が乾くことはいいことでしょうか。

(左)チボリ公園と(右)ニューハウン(冬)

デンマークは日本の医師免許のみで実際に治療を行える数少ない国の一つです。ただし医師として登録されるわけではなく、あくまで病院医師の指導の下手技を行うことが許されています。実際に医師として登録されるにはデンマーク語検定の合格が必須ですがまだ手が出せていません。コミュニケーションは基本的に英語で行っています。

私が留学しているRigshospitaletはデンマーク最大の王立大学病院であり、TAVIは約70%、その他のSHD intervention症例はほぼ100%当院に集約され私が所属するSHDチームが治療を行います。TAVIは年間約500例施行しており留学中は約100-150例/年のTAVIを第一術者として施行可能です。勤務は月曜日から金曜日の8時-16時で土日・祝日は休みです。月曜日は全麻手術(TXA-TAVI, Mitral/Tricuspid valve intervention)、火曜日-木曜日はTF-TAVI、金曜日はLAAC, PFOなどを行っています。術後は次の日の手技準備や論文作成、多施設研究へのデータ提供、ライブなどのスライド作成など日本にいた時とあまり変わらないかもしれませんが、外勤や外来などはなく手技にのみ集中することができるため、とても充実した留学生活を送ることができています。またGUCH(成人先天性心疾患)チームは別にあり、日本ではまだ導入間もない肺動脈弁治療やVSD治療などに立ち会えることもあり、医師として成長を感じる瞬間でもあります。

また論文作成に関しても現在のボスであるOle de Backer先生は様々な質の高い論文を執筆されており、その一部を手伝わせていただいております。特にTAVI, LAAC領域で世界の先端を走っているこの病院で臨床研究にも従事できることはとても嬉しく思っています。

Rigshospitalet

最後に私の留学を現在支えてくれている二人の仲間を簡単に紹介します。我々のclinical fellowshipは先述の通り、fellowが手技を極めて多く経験できる数少ない施設であり、従って北米を除く各諸国から留学希望者がおり常に約3年待ちといわれています。その様ななかで出会ったベルギー人のYannickとクロアチア人女性のDavorkaは月曜日から金曜日朝から夕方まで一緒に過ごし、時に夜も一緒に飲みに行く大切な仲間です。英語にdisadvantageがある私が、なんとか踏ん張りながらも留学を続けられているのは彼らのおかげであり、かけがえのない仲間を作ることができました。これも留学の魅力の一つかなと感じています。

Clinical fellows

今後OCEANから世界に情報を発信していくためにも、こちらで様々なことを学び日本の医療に貢献できるように引き続き精進したいと考えております。今後ともご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。