構造的心疾患(SHD)カテーテル治療の多施設レジストリーグループ『OCEAN-SHD研究会』
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SHD-topic-LAAC 第84回日本循環器学会におけるLAACのトピック

2021年1月27日  著者:社会福祉法人 三井記念病院 循環器内科 阿佐美 匡彦  LAACSHDの最新話題


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2020年の日本循環器学会はCOVID-19のパンデミック下で行われ、史上初となるWEB開催となった。しかしながら16,800名以上が参加し盛大な会となった。その中で、2019年9月より本邦で治療が可能となった経皮的左心耳閉鎖術(LAAC)に関しては大きな注目が集まった。その中で本邦における導入前の臨床治験であるSALUTE trialの2年の結果が報告され、非常に興味深い結果であったので報告する。

2017年2月から7月に日本の10施設で計54名の患者さんが試験に参加した。その中で、各施設1-2名の計12名がroll-in群として登録され、残りの42名がITT解析された。

平均年齢は72.5±8.8歳で、男性が83.3%であった。CHA2DS2-VASc scoreが3.6±1.6でHAS-BLED scoreが3.0±1.1の患者群であり、ABLの既往が40.5%に認められた。手技の成功率は100%であり、術後45日、半年、1年の時点のいずれのタイミングでもデバイス周囲のjet幅が5mmより大きい症例は1例も認めなかった。その結果、ワルファリンの中止率は45日で97.6%、半年で95.2%、1年で95.1%と高い確率で中止ができていた。1名のみ2年の時点でfollow-upできなかったものの、残りの41名はデータ収集に成功した。その中で、2年の時点で全脳卒中イベントは3名(7.1%)に発生しており、すべて手技とは関連のないnondisabling strokeであった。一方でその他の全身塞栓症やデバイス血栓症の発生は認めなかった。さらに心臓血管死は1名(2.4%)に認められており、心不全の増悪によると思われる突然死であった。出血イベントに関してはmajor bleedingが2名(4.8%)に発生しており、1例はDAPT期間中に認めた血尿でBARC 3b相当の出血であった。もう1例は、アスピリン単剤内服中にSSSで失神転倒し、外傷性のクモ膜下出血を認めBARC 3c相当の出血をおこした。本研究では、術者は皆初めて手技を行う医師であるにも関わらず、周術期に大きなトラブルなく、手技の成功率が100%と安全に手技を行うことに成功している。また、2年間の経過観察でもイベントは従来の報告と比較して差がないデータであった。

本治療は日本で初めて導入された抗凝固薬に代わる新たな心房細動患者に対する脳梗塞予防デバイスであり、抗凝固薬の中止による出血イベントの減少も期待されるため、出血リスクが高く抗凝固薬が継続困難な患者さんに対する新たな治療として、今後さらに期待される。一方で、術後の抗凝固療法のレジメンに関しては、まだまだ未解決な課題も多く、ASAP too trialやPINNACLE-FLXなど、ワーファリン以外の抗凝固薬における術後成績に関する研究が進んでおり、これらの問題の解明が期待される。また、DRTに関してはまだまだevidenceが不十分なため、術前にhigh riskな患者群をどのように検出していくのかは確立されているとは言い難い。さらに、術前にTEEを行うことが困難な患者群もおり、CTでの代用が可能かなど、まだまだ研究すべきことは多い。それらの解明も今後OCEAN-LAAで行い、本治療が安全に受けられるように、今後日本ならでは研究を行っていきたい。