構造的心疾患(SHD)カテーテル治療の多施設レジストリーグループ『OCEAN-SHD研究会』
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大動脈弁狭窄症に対する日米双方のガイドラインが2020年に改訂されました。

2021年1月27日  著者:林田 健太郎  SHDの最新話題TAVI


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2020年はCOVID-19によって大変大きな影響を受けた年でしたが、その中で日米双方の弁膜症治療ガイドラインが改訂され、日常臨床に大きなパラダイムシフトをもたらしました。

まず2020年3月に日本循環器学会の弁膜症治療ガイドラインが改訂されました。https://j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2020_Izumi_Eishi.pdf

これまでTAVIの適応は外科手術が高リスク、もしくは手術不可能な方が対象とされ、常に外科手術リスクスコアがgate keeperとなっていましたが、近年の無作為か比較試験の結果より、短中期におけるTAVIのSAVRに対する成績は同等、もしくは優位であることが証明されたことから、今回のガイドラインからは外科手術リスクスコアはもはやgate keeperでは無くなり、表からも削除されています。

また年齢の目安として、80歳以上はTAVI、75歳以下は外科手術と記載されました。つまり外科手術リスクが低い患者さんでもある程度の年齢(80歳以上)であれば第一選択としてTAVIを施行できることになりました。事実上低リスクまでTAVIの適応が拡大されたのと同等になっています。

また無症状の患者さんでもまず治療介入が必要かどうかを判断し、必要な症例には有症状と同じ基準で外科手術かTAVIを選択することになりました。これまで開胸手術の補完的治療として描かれてきたTAVIが、ついに対等な治療手段の一つとして描かれているのは大変画期的だと思います。

私も班員の1人としてガイドラインに携わらせていただき、主に大動脈弁狭窄症を担当させていただきましたが、ここに至るまでに本当に多くの議論を重ねて最終的にこのような画期的かつ日常臨床の現実に即したものになり、諸先生方に自信を持ってお勧めできるものになっています。

それに続き2020年末には米国の弁膜症ガイドラインが改訂されました。

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIR.0000000000000932

こちらでもやはり開胸手術とTAVIが対等に描かれており、やはり外科手術リスクスコアはもはやgate keeperではなくなっていることが読み取れます。また開胸手術、TAVIに加え保存的治療が適切な患者の特徴も記載されており、侵襲的治療以外の選択肢も常に念頭に入れる必要があることが意識されています。

年齢については65歳以下を機械弁による開胸手術、65歳以上は生体弁、80歳以上をTAVI優先としているため、結果的に65-80歳は開胸手術とTAVIのどちらも選択できるようになっています。同じ基準が日本で適応できるかについては日本人の平均余命が欧米より1-2歳長いことを鑑みても現状は議論が残るところだと思います。今後より長期の生体弁の耐久性が確立されるのを待つ必要があると思います。

どちらのガイドラインでも強調されているのが、ハートチーム(弁膜症チーム)によるしっかりとした議論です。ここの患者さんについてチームでしっかりと慎重に議論を重ね、最適な治療を選択していることが最も重要であると考えられます。