構造的心疾患(SHD)カテーテル治療の多施設レジストリーグループ『OCEAN-SHD研究会』
Optimized CathEter vAlvular iNtervention Structual Heart Disease

youtube
instagram
facebook

ブログ

MitraClip の最近。についてのつぶやき

2022年3月8日  著者:岩手医科大学病院 循環器内科 中島 祥文  SHDの最新話題Mitral


経カテーテル弁膜症治療、大動脈弁の経カテーテル的留置術TAVIと双璧をなすはずの僧帽弁治療、共に2000年代前半に開発され、臨床応用されてきました。日本に入ってきたのはTAVIの2013年に対して、2018年に僧帽弁閉鎖不全のカテーテル治療デバイスMitraClipが導入され、ちょうど4年を迎えました。だが、なぜか地味。

職人気質な、ネチネチとしたと、うちの医局員からは評されています。

 

この地味な僧帽弁治療ですが、やはり弁形成ということで、弁の性状が患者さん毎に異なり、また治療ストラテジーもハートチームにより異なることから、まとまったデータができにくいというのも1つのポイントかと思われます。

 

そんな中、2022年に入ってから2018年に発表された、2次性僧帽弁逆流症に対する薬物療法対マイトラクリップによる僧帽弁治療のRCTであるCOAPT試験のサブ解析が2報でました。

腎障害に関するものと年齢に関するものです。

腎障害については、ベースラインの腎機能が悪い群は、生命予後、心不全入院が有意に高い、その一方で、マイトラクリップによる介入により腎障害の程度によらず、腎障害の進行や新規の透析導入を減少させることができたとされています。(Beohar N, et al. Impact of baseline renal dysfunction on cardiac outcomes and end-stage renal disease in heart failure patients with mitral regurgitation: the COAPT trial. Eur Heart J. 2022 Feb 3. Epub ahead of print. PMID: 35134897.)

年齢については、年齢によらず、マイトラクリップは予後改善をするが、74歳未満の若い群の方が、74歳以上の群と比べてより心不全入院のハードエンドポイントを改善する効果がより高い。また、生活の質の改善に関しては、いずれの群でもマイトラクリップでの治療が有効であった。と結論づけられました。(Song C, et al. Age-Related Outcomes After Transcatheter Mitral Valve Repair in Patients With Heart Failure: Analysis From COAPT. JACC Cardiovasc Interv. 2022 Jan 20. Epub ahead of print. PMID: 35093278.)

 

いずれの論文でも、しっかりと僧帽弁逆流を減らせば、どの様な群に対しても有益であるが、その差は患者群によって多少異なるというものでしょうか。

患者さん毎に目標を設定して介入していくことも、マイトラクリップの面白さかもしれません。マイトラクリップは現在第4世代を使用していますが、サイズが4種類に増えており、その使い分けなども影響してくるところかと思われます。

今年のCVIT総会では、シンポジウム「MitraClip G4の至適デバイス選択とは?」というセッションで、OCEANのメンバーにプロコンでディスカッションをしていただく予定です。やはりいまだに個人的には、小さい日本人サイズのNTがしっくりきます。

日本からも、少しずつデータを出していくことができれば、治療を必要とする患者さんに適切な医療が提供できるのではないかと思います。

この治療に、より明るい未来が開けることを心より念じています。

中島先生_Pic1中島先生_Pic2