MitraClipでもう涙を流さないために
2022年1月9日 著者:帝京大学循環器内科 渡邊雄介 Mitral/SHDの最新話題
日本でMitraClip G4システムが使用可能となって、はや1年が経過しました。G4になって思ったところにクリップが持って行きやすくなり、幅広のMRも一つのXTWで抑え込めるようになって、何よりグリッパーラインの抜去がスムーズになりトラブルが減りました。かなりデバイス自体の改良が実感できています。
その一方で、single leaflet device attachment (SLDA)やleaflet tearを生じてしまうケースもG4でも経験することがあります。また剖検例などで弁尖でなく腱索を把持しまっている例も報告があります。
SLDAなのか?Tearなのか?perforationなのか?腱索をつかんでしまっているのか?はっきりとした分類と、どのくらいの頻度で発生するものなのか最新の報告がありましたので紹介します。
これは第三世代のNTR/XTRを使った欧米57施設、1041例のEXPAND studyからの報告でdevice-related leaflet adverse events (LAE)について発生率と分類をわかりやすく説明しています。LAEはトータルで20例(2.0%)に認めました。単独SLDAは16例(1.6%)で、leaflet injury (leaflet tear もしくはperforation)とSLDAの両方が2例で、内訳はXTRが10例、NTRが8例でした。Leaflet injuryは4例(0.4%)で認めました。SLDAに関しては75%の症例でadditional clipの追加にてBail outされたとのことです。
LAEについて発生率だけでなく、分類もしています。Tearとperforationの違いは、leaflet のダメージがedgeに到達しているとTear、していないとperforationとのことでした。さらにクリップによるゆがみをShape distortionとしてLeaflet injuryの中に分類しております。また下図のようにSLDAも3段階に分類し、頻度不明ですが腱索をつかんでしまうChordal entrapment(CE)についても言及しております。
この論文ではXTRとNTRによるLAEの発生率に差はありませんでした。またどのような僧帽弁の性状でLAEが発生しやすいかまでは同定できませんでした。今後OCEAN研究会としてもそのようなところを明らかにしていきたいです。
この論文でLAEの分類が整理された感があります。我々インターベンション医としても、LAEの分類をしっかり頭にいれておく必要がありそうです。
もうMitraClipで涙を流さないために。