構造的心疾患(SHD)カテーテル治療の多施設レジストリーグループ『OCEAN-SHD研究会』
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経皮的左心耳閉鎖術(LAAC)は抗凝固療法の代わりになり得るか!?

2022年1月16日  著者:富山大学 上野博志  LAACSHDの最新話題


2020年9月より我が国でスタートしたLAACも2年が経過し、約1900名の患者さんがこの新しい心原性塞栓症予防治療を受けられた。導入当初に使用されたWATCHMAN2.5は少々、いやかなり“荒削り”なデバイスであり、合併症が起こらないよう祈るような気持ちで毎回展開・留置したのを覚えている(実際、自分でも左心耳穿孔を作ってしまった)。WATCHMAN2.5の課題は、相当な時間をかけて改良され、WATCHMAN FLXが登場した。前述の水谷先生の記事にもあるように、PINNACLE FLX試験においてFLXの安全性が証明され、満を持して2021年5月に我が国に導入された。FLXを自分で使ってみて強く思ったのが、“ようやく予防的治療として使えるデバイスになった(安心して留置できる!)”ということである。

さて、安全に左心耳を閉鎖できるデバイスを手に入れたわけが(急性期の安全性・有効性は担保された)、長期成績についてはどうだろうか。ワルファリンに対するWATCHMAN2.5の成績はこれまでいくつかの報告があり(PROTECT AF試験や PREVAIL試験など)、5年にわたり同等の塞栓症予防効果を認め、WATCHMAN2.5留置群では出血性合併症が減少した。しかし、令和の時代、非弁膜症性心房細動に対しワルファリンによる抗凝固療法を選択する事はまずない。つまり本当の意味で抗凝固療法に対抗するにはDOACに対しての安全性・有効性を示すことが必要である。

2022年早々、これに対する答えが一つ報告された(PRAGUE-17:J Am Coll Cardiol 2022;79:1–14)。平均CHA2DS2-VASc=4.7かつ平均HASBLED=3.1と、塞栓症および出血高リスク患者を対象とし、DOAC群とLAAC群に分けて4年経過を見たところ、一次エンドポイント(全身塞栓症/心血管死/出血合併症)において、LAAC群はDOAC群に対し非劣勢を示し、脳梗塞は同程度で、手技に関連しない出血イベントについては有意に低下させた。すなわち出血リスクの高い患者において、4~5年の経過であればLAACは抗凝固療法(ワルファリン/DOAC問わず)と比べて出血合併症を減らしながら同等の塞栓症予防効果があることが証明された。

次に期待されるのは、出血リスクが高くない患者におけるDOACに対するLAACの有用性である。現在いくつかの国際臨床研究が進められており、その中の一つであるCAHMPION-AF研究にはOCEANチームからも数施設が参加しており、4~5年後の結果が期待される。

また、LAACにおける留置後の適切な抗血栓療法、デバイス関連血栓症のリスク因子やその対策、など様々な疑問が未解決のままである。私たちOCEANチームはこれから詳細なデータベースを構築し、日本人におけるLAACの疑問点を、今後解決し発信していきたいと考えている。。

上野博志_富山大学