構造的心疾患(SHD)カテーテル治療の多施設レジストリーグループ『OCEAN-SHD研究会』
Optimized CathEter vAlvular iNtervention Structual Heart Disease

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新しいデバイスMitraClip G4システムについて

2021年3月8日  著者:倉敷中央病院 久保俊介先生  SHDの最新話題Mitral


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本邦で行うことができる僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する唯一のカテーテル治療がMitraClip治療ですが、2020年9月よりその新しいデバイスシステムである、MitraClip G4が使用可能となりました。

このMitraClip G4システムは従来用いてきたMitraClip NTシステムと異なり、4つの特徴を持っています。1つ目は、もともと用いていたクリップサイズ(NT)に加えて、アームの幅が広いクリップ(NTW)、アームの長さが長いクリップ(XT)、そしてアームの幅が広く長さも長いクリップ(XTW)の計4種類のクリップが新たに用いることができるようになった点です。これによって僧帽弁の解剖によったクリップの使い分けが可能になりました。2つ目は、controlled gripper actuationシステムといって、これまで僧帽弁弁尖を把持するために下ろしていたgripperという部分を前尖と後尖に分けて下すことができるシステムが導入された点です。これによって、把持が困難であった弁尖を分けて把持することができるようになりました。3つ目は、MitraClipのガイドカテーテルから持続的に左房圧をモニターできるようになった点です。これまでの研究からMitraClip治療により左房圧が低下した症例は予後が良いと報告されており、この変化がreal-timeで認識できるようになります。4つ目は、これまでのMitraClipシステムは操作性が悪く、またクリップのリリースステップが複雑だったのですが、その操作性が改善され、リリースステップが簡便になった点です。

この中で、最も実臨床に実臨床にインパクトがあったのは1つ目の4種類のクリップが選べるようになった点だと思います。動物実験でも、NTクリップに比べてNTWクリップは1.7倍、XTWクリップは2倍以上MRを減少されることが報告されています。これまでのクリップサイズだと、例えば逆流幅の大きい患者さん、弁尖間の接合が悪い患者さんや、弁の可動性が非常に大きい患者さんは弁尖の把持自体が困難であったり、弁尖の把持ができてもMRの減少が十分に得られない場合がありました。そのような患者さんに今回登場したXTWを用いることで、より簡便に効果的にMRを減少させることが期待できますし、私が実臨床で用いた感触としても、その通りの効果が得られています。ただ、アームが長いクリップは良いところばかりではなく、弁尖により強いテンションがかかることで、弁尖を損傷する合併症を起こしやすいのではないかと危惧されています。そのため、弁尖が薄い、また弁尖が短い僧帽弁を治療する際には注意する、あるいはアームが短いNTWやNTを用いる選択をする場合もあります。また、MitraClip治療は前尖と後尖を接合させるという治療の性質上、僧帽弁を狭くしてしまいます。ですので、もともとの僧帽弁がそこまで大きくない患者さんでは同様にNTWやNTのクリップを用いることが多いです。

このMitraClip G4デバイスは新規デバイスが遅いと言われている本邦で、なんと世界に先駆けて米国の次に、欧州より早く導入できており、画期的ことです。このデバイスを用いて、多くのMRで困っている患者さんに、より良いカテーテル治療をお届けできなら良いなと考えています。