構造的心疾患(SHD)カテーテル治療の多施設レジストリーグループ『OCEAN-SHD研究会』
Optimized CathEter vAlvular iNtervention Structual Heart Disease

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掛ちゃん、もう5年になるんだね。

2023年8月2日  著者:仁科 秀崇(筑波メディカルセンター病院)  TAVISHDの最新話題


 

OCEANのblogの趣旨からは離れるかもしれませんが、少し思い出話をさせて下さい。

筑波メディカルセンター病院のTAVIプログラムをゼロから築き上げた掛札雄基先生との突然のお別れからこの夏で5年になります。

 掛札先生は2004年に弘前大学を卒業後、初期臨床研修制度が始まった年の一回生として筑波メディカルセンター病院に入職されました。掛札先生と面識のある皆さんは知ってらっしゃると思いますが、本当に誠実、一所懸命で、自分には厳しい一方、患者さんやスタッフにはとても優しい、誰からも愛される人柄の先生でした。彼は当時日本で始まったばかりのTAVIという革新的な治療法をつくばの地でも発展させるため、林田健太郎先生に師事する形で慶應大学での半年間の国内留学を経験し、留学期間終了後も慶應大学でTAVIがある日には毎週つくばから東京まで通いながら研鑽を積んでいきました。その後、当院でのハートチームの構築を経て2017年3月にTAVIを開始することが出来ました。林田健太郎先生にプロクターとしてきていただき初症例を無事に終了させた際には喜びと安堵感からか目に涙を浮かべて微笑んでいたことを昨日の様に思い出します。その後も彼の尽力と周囲の協力により当院のTAVIプログラムは順調に発展し、2018年7月27日には初症例後わずか1年と4ヶ月でTAVI100症例達成を成し遂げました。その翌日である2018年7月28日に彼は本当に静かに、突然我々の前からいなくなってしまいました。彼の訃報は衝撃的であり、深い悲しみと同時に、“どうして彼なんだ?”というやりどころのない怒りのような感情をしばらくの間は振り払うことが出来ませんでした。その後は精神的にも身体的にもつらい日々が続きましたが、彼の遺志をしっかりと引き継いでいかねばという気持ちと周囲の多大なる理解、協力に助けられ1年ほどかかりましたがようやく再び前を向いて進めるようになった気がします。今年の夏で彼が我々のもとをさって5年になります。そしてほぼ同時期に筑波メディカルセンター病院のTAVI累積症例数も500例に到達しようとしています。彼を思い出すといまでも涙が出てきますが、今年も、そして今後も笑顔で彼にいい報告ができるように努力を続けていきたいと思います。

彼の遺志を継ぎ、彼の功績を称えるためにも、みなさんには掛札雄基という男の姿や人柄を時折思い出し、彼を大切な仲間として心に抱えていっていただきたいと思います。彼は私たちの中で生き続けています。