構造的心疾患(SHD)カテーテル治療の多施設レジストリーグループ『OCEAN-SHD研究会』
Optimized CathEter vAlvular iNtervention Structual Heart Disease

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患者さんも術者もストレスのない左心耳閉鎖とは?

2023年8月2日  著者:福永 真人(小倉記念病院)  LAACSHDの最新話題


広がりそうで広がらない左心耳閉鎖。

いやーいいですよね、抗凝固療法いらなくなるんでしょ?と言いながら、

“えー、すぐに抗凝固療法切れないし、デバイス血栓とかもあるの?”

“全身麻酔必須?うちはなかなか枠が厳しいんですよね”

など、やりたくない理由も様々にあるこの治療。

そんなモヤモヤを吹き飛ばしてくれるような明るい、”そう遠くない未来”のお話をしたいなと。

術後抗血栓療法について、レジュメがどうこうではなく、純粋に抗血栓性のデバイスになればどうなるか?というお話。

フッ素樹脂加工のWATCHMANデバイスでのイヌ及びブタの実験では、抗血栓療法なしにも関わらず、フッ素樹脂加工のWATCHMANでは非加工の現行のWATCHMAN FLXに比較し、DRTが有意に少なく、アルブミン沈着がより大きく、血小板沈着がより少なかった。また、90日後の内膜被覆率も有意に高かったことが報告されています。

(JACC: Clinical Electrophysiology Available online 18 May 2023 https://doi.org/10.1016/j.jacep.2023.04.013)

植え込み直後から抗血栓療法が無くなることは、すぐにはないのかもしれませんが、少なくとも今よりもずっとシンプルになることが期待されます。

私の留学していたヨーロッパでは、すでに長い間行われていたICE guide・局所麻酔での左心耳閉鎖術は入室から退室まで1時間というものでしたが、実際はどうなのでしょうか?まとまった報告として、ICE LAA studyを見てみます。

ヨーロッパの7センターでのsingle armの観察研究ですが、100症例で手技成功は100%でしたが、45日後のTEEでのno leakの割合が74.7%と過去のTEE guideの手技に比べて少ない点が懸念されます。手技時間も過去にICE guide手技の経験が豊富な施設であっても、TEE guideに比べ長く、特にICE guide手技の経験に乏しい施設では更に長くなる傾向があり、決して簡単ではないことが伺えます。

(JAmCollCardiolIntv2023;16:643–651)

上記の道のりは平坦ではないものの、今後の患者さんにも術者にもストレスのない左心耳閉鎖に向けて、着実に進んでいるようです。