構造的心疾患(SHD)カテーテル治療の多施設レジストリーグループ『OCEAN-SHD研究会』
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弁膜症患者における心房細動の適切な管理とは何か?CVIT2023での発表を終えて

2023年8月11日  著者:山本 真功(名古屋/豊橋ハートセンター)  LAACSHDの最新話題


CVIT2023では本当に多くの先生に直接お会いして、個人的には非常に楽しい思い出となりました。初日には湘南鎌倉病院の斎藤滋先生と帝京大学の渡邊雄介先生がアジア・日本のPIとして参加したEnvisage-TAVI-AF試験(TAVI治療後の患者に対するVKAとDOAC:エドキサバンのランダム化比較試験)を中心にランチョンセミナーで発表する機会を頂きました。ここで、今一度、本邦における弁膜症患者の心房細動をどのように管理するべきか?というテーマを深く考える機会を頂きました。

まずはOCEAN-TAVI registryにおいてTAVI患者における心房細動の罹病率は、元帝京大学の日置紘文先生がAJCに掲載した2017年と自分がJACC Asiaの方で報告した2022年において20%程度であり経年的な変化はないようです。またOCEAN-Mitralの方では、東邦大森病院の佐地真育先生がJACC Asiaに、倉敷中央病院の久保俊介先生がJAHAに報告した論文では63.6%と報告しており、疾患によって罹病率にかなり違いがあることも浮き彫りとなりました。いずれにせよ、弁膜症患者における心房細動の割合は高く、特にSHD治療の現場においては高齢者・超高齢者を対象としており、適切な抗凝固療法の使用は実臨床における重要な課題と言えます。

前述したEnvisage-TAVI-AF試験の本論文はNEJMに掲載されており、Primary efficacy outcomeにおいては、DOAC:エドキサバンのVKAに対する非劣勢を示すことができたのですが、消化管出血を中心にした大出血がエドキサバン群でVKA群に比較して多いという結果が示されました。その後、OCEAN施設で構成された日本人におけるサブ解析では、両群ともにPrimary efficacy outcome、大出血の頻度も含めて有意差はないことが、帝京大学の渡邊雄介先生がCirc Jに報告しております。そのほかにもエドキサバンの生体弁留置後患者に対する有効性を示唆する研究の蓄積により、TAVI弁を問わず、生体弁留置後の心房細動患者に対しては広くDOAC:エドキサバンの使用が推奨されるということが、JACC Asiaのexpert consensus documentに記載されております。

一方で問題となってくるのが、抗凝固療法を内服した際の出血関連有害事象だと思います。いわゆる出血ハイリスク群(HBR)は、OCEAN-TAVIのデータで近畿大学の水谷一輝先生が、91.6%の割合でARC-defined HBRであることを報告しています。ほとんどすべての症例がHBRであるTAVI患者をどのように適切に管理するべきか?という問いには、経皮的左心耳閉鎖治療(LAAC)に期待するところが大きいと感じます。三井記念病院の阿佐美匡彦先生がOCEAN-LAACの初期成績のデータを使用して、約90%以上の高い手技成功率と抗凝固中止率であったことを報告しています。さらに、80歳以上の出血ハイリスクの高齢者においては、現時点ではLAAC施行後45日以内には抗凝固療法を継続するため、45日以内での出血イベントが10%にも及ぶことも報告しています。もちろん出血リスクの高い症例であり、すべての出血が抗凝固療法に起因するものではないとう事実を考慮しても、診療における適切な抗血栓療法を考えるうえで注意喚起する形の報告になったのではないかと思います。 今回の発表では、OCEAN-TAVI-Mitral-LAACのすべてのデータを引用して、包括的に弁膜症に対する抗凝固療法の在り方について検討できました。本当に日頃からデータ構築に協力して一緒に頑張っているOCEANの仲間に心から感謝したいです。また、今回の発表を通じて、これまでに明らかになったこと、今後われわれがどのように取り組んでいくべきかというものが見えてきたように感じました。これからも引き続き、日本から世界に向けてデータを発信するという意思を持って、しっかりと取り組んでいきたいと思います。

写真:母校の仲間+尊敬する偉大な先輩と一緒に
(注釈)メンバーを知らされていない後輩の一人が、遅れてきた林田先生に対して芸能人に出会ったような輝きと羨望のまなざしを、その後さらに遅れて来られた白井先生にも全く同じリアクションでした(笑)。自分も、こんな素敵な先輩になりたいです。。。