構造的心疾患(SHD)カテーテル治療の多施設レジストリーグループ『OCEAN-SHD研究会』
Optimized CathEter vAlvular iNtervention Structual Heart Disease

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左心耳閉鎖デバイスの進化 〜WATCHMAN FLX〜

2021年8月2日  著者:近畿大学病院 水谷一輝  SHDの最新話題LAAC


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日本で経カテーテル的左心耳閉鎖術が開始されて約2年が経過しました。

開始以来Boston Scientific社製の WATCHMANが唯一使用可能な閉鎖デバイスとして用いられてきましたが、WATCHMANを用いた閉鎖手技はTAVIを含むSHD治療の中でも難易度は比較的高いと評されてきました。その要因として① 留置するために全展開したデバイスは再収納が出来ないこと、② 留置する際にデバイスを押しながら展開することが安全性担保のために推奨されていなかったこと、③ デバイス長が長く、日本人の左心耳形態、サイズに不向きなケースがあったこと が挙げられます。これらの要因がすべて改善されて、新たに使用可能となったデバイスが WATCHMAN FLX (フレックス)です。

簡単に説明すると、しなやかに柔らかくなって金属露出部が減ったことにより留置の際に押しながら展開すること、そして何度もカテーテルに再収納することが可能となりました。これにより留置手技も簡単となり安全性もさらに高まっています。デバイス長も短くなり、日本人患者さんにもよりFriendlyなデバイスになったと言えます。(図)

WATCHMAN FLEX

これはCirculation誌に発表されたPINNACLE FLX trialの結果からも明らかです。(Circulation. 2021;143:1754–1762. ) 手技成功率は 98.8%、手技にともなう全死亡、虚血性脳卒中、全身性塞栓症、または開心手術もしくは重大な血管内インターベンションを要するデバイス/手技に関連する事象のいずれかの発生率も0.5%、そして術後12ヶ月時点での左心耳有効閉鎖率は100%と良好な成績が報告されています。また、特筆すべき点としてPINNACLE FLX trialでは術後45日間の抗凝固療法として従来のワーファリンではなく、DOACが用いられたため、FLX留置後の後療法としてDOACが日常診療でも使用可能となりました。

OCEAN-SHDに参加している施設では、より早い時期にWATCHMAN FLXを使用開始しており、手技も容易になったことから、治療時間が30分もかからないというケースも報告されています。今後ますます治療件数が増加し、出血高リスクの患者さんへの福音となることが期待されています!