構造的心疾患(SHD)カテーテル治療の多施設レジストリーグループ『OCEAN-SHD研究会』
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TAV in TAV 始まります!!

2023年2月1日  著者:福康志(倉敷中央病院 循環器内科)  TAVISHDの最新話題


 ついに本邦でもTAV in TAVが開始されることになった。今年でTAVIの保険償還から10年目を迎えるが、初期のころからTAVIを開始した施設を中心にSVDの発生が散見されるようになってきている。

 当院においても、治験中の2010年にSapien XTを留置され、10年後に重症SVD(重症ARによる心不全入院)と診断されsurgical explantationを行った症例を経験している。この患者さんは乳がん術後の放射線治療後であったためTAVI適応となっていたのだが、TAVIを受けたのが66歳と若かったため、10年後にsurgical explantationという治療が選択可能であった。しかしこれは稀なケースと考えられ、実臨床ではTAVI後に重症SVDと診断されても、年齢や体力的な問題から外科的治療が可能と考えられる患者はかなり限定されるものと思われる。したがって、redo-TAVIが可能となるのは、このような高齢の患者さんにとって大変喜ばしいことである。TAVI弁のsurgical explantationは、30日死亡が約15%と一定のリスクを伴う手技であることが米国から報告されている。

 TAVI弁のsurgical explantationは、30日死亡が約15%と一定のリスクを伴う手技であることが米国から報告されている。※1, ※2 ただし、これらの報告ではsurgical explantationが必要となった原因に関してIEが4割で、SVDは2割程度にすぎないということを考えると、これをSVDに対する手技の成績としてとらえるには限界があることがわかる。しかしながら、機能不全に陥ったTAVI弁に対する治療の選択肢が増えることは大いに歓迎されるべきことである。さらに、低リスク患者のライフタイムマネージメントを考えたとき、TAV in TAVという治療の選択肢が増えたことで2nd インターベンションを含めた治療戦略に関する議論がより白熱していくであろう。加えて、TAV in TAV を見据えたTAVI弁の選択や留置法についても議論が深まっていくであろうと考えられる。

 TAV in TAVは、まずはバルーン拡張型の限定使用となるが、今後確実に症例は増加していくものと思われる。一般に、欧米人に比べてTAVIが解剖学的に不利と考えられる日本人(アジア人)にとって、TAV in TAVがどこまで有効な治療法となるのかは我々が明らかにしていかなければならない大きな課題の一つである。

References

※1. Bapat VN, Zaid S, Fukuhara S, Saha S, Vitanova K, Kiefer P,        et al.Surgical Explantation After TAVR Failure: Mid-Term
       Outcomes From the EXPLANT-TAVR International Registry.
       JACC Cardiovasc Interv
2021;14:1978-1991.

※2. Yokoyama Y, Kuno T, Zaid S, Kaneko T, Takagi H, Tang GHL,
       et al.Surgical explantation of transcatheter aortic
       bioprosthesis: A systematic review and meta-analysis.
       JTCVS Open
2021;8:207-227.