構造的心疾患(SHD)カテーテル治療の多施設レジストリーグループ『OCEAN-SHD研究会』
Optimized CathEter vAlvular iNtervention Structual Heart Disease

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AFMRへのTEER治療介入効果に期待してます

2022年12月13日  著者:岡崎 真也(順天堂大学医学部附属順天堂医院 循環器内科)  MitralSHDの最新話題


山口先生からバトンが回ってきまして、今回blogを担当します順天堂大学の岡崎です。

順天堂大学医学部附属順天堂医院では、年間150例以上のTAVIを中心に、MitraClip、ASD・PFO閉鎖、 左心耳閉鎖、PDA閉鎖のSHDカテーテル治療を行っています。

今回遅ればせながらOCEAN-SHDのメンバー(MitraClip)に加わらせていただきましたので、皆様と一緒にSHD治療を勉強しながら切磋琢磨していきたいと思います。

さて、blogということで何を書いたものかと迷ったのですが、最近興味を持って取り組んでいるMitraClipによる心房性FMR(AFMR)の治療に関して論文を読んだので雑観とともにシェアしたいと思います。

JACC Interventionの2022年9月12日号はTEERの特集になっていて、TEER関連の論文が5本乗っているのですが、そのうち3本がAFMRに対するTEERの論文でした。

1本目(JACC Intv. 2022 (17) 1711–1722)はCedars-Sinaiからの論文で、

1044人のTEERのうち、AFMR症例(114人)は術後の心不全入院や死亡が一次性MRよりも多く、しかし心室性FMR(古典的なFMR、VFMR)よりは少ない、という内容でした。日本の先生もたくさんTEERの勉強に行かれている施設ですが、症例数の多さには圧倒されます。

2本目(JACC Intv. 2022 (17) 1723–1730)は、第4世代MitraClipを使った多国籍多施設共同研究のEXPAND studyから、コアラボでエコー画像を解析した835例のうちAFMRと診断された53例とVFMRと診断された360例において、TEERの効果を検討されています。どちらの群もほぼ同様のMRの減少とQOLの改善を認め、TEERはAFMRにも有効であることを示唆しています。

最後の論文(JACC Intv. 2022 (17) 1731–1740)はドイツの田中先生、杉浦先生からです。単施設でTEERを行った415例のFMRのうち、AFMRは118例で、AFMRの手技成功率は94.1%、院内死亡率は2.5%と良好で、術後にmoderate以上のMRが残る予測因子としてはLAVIとleaflet-to-annulus index(A2・P2の長さの和と、僧帽弁輪径の比)があげられています。

AFMRは一般には左室機能不全を伴わない機能性MR(弁葉の変性がない)と定義されていますが、今回の研究の間でも定義がバラバラで、しっかりとした定義が決められていません。心房細動によるものだけかと思いきや、心房細動のないものが3割〜5割程度報告されていて、HFpEFによるものも一定数ある様です。主な機序は弁輪拡大とそれに伴った弁葉拡大の欠如と心房原性テザリングと言われていますが、VFMRとの境界線など、いまだに不明瞭なことも多い疾患です。高齢者になるほどほどVFMRよりAFMRが多くなるので、日本では特に気をつけるべき疾患だと思いますが、今回の特集で、やはりTEERが効果的と示されているので、今後もより積極的に治療に取り組んでいきたいと思います。AFMRに関しては当院の鍵山と金子が中心となって行っているREVEAL-AFMR研究(https://center6.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000052578)でも1000例ほどのAFMRの実態を調査しているので、ここからもいろいろなことが明らかになるのを楽しみに待っています。